こんにちは。 お久しぶりです。
ご無沙汰しておりました。
今回より、再び更新していきたいと思います。
さて、今回の内容は前回に引き続き「ギリシャコインのタイプ」についてのご紹介です。
古代ギリシャコインに描かれた神々を、コインや神々の像の写真も交えながらご紹介していきます。
今回はアテナやキューピッド、ヘラクレスやゼウスといった馴染の深い神々です。
それでは、よろしくお願い致します。
ギリシャコインのタイプ④
アスクレピオス(エスクラピウス) 〈Asklepios〉
医学と治療の神で、蛇の絡んだ杖に寄り掛かる男性として描かれる。病気を回復させる神の象徴として、時々少年のテレスフォロスが脇に立っている。
アスクレピオスに捧げられた蛇は、慎重さと元気回復の象徴で、井戸を守り薬草を見つける力があると信じられていた。
アテナ(ミネルバ) 〈Athena〉
知恵・農耕・産業・芸術の神。パラスともいう。ゼウスの子で“オリンポス12神”の一人。
人を戦争の危険から回避させるとともに、慎重さと勇気と忍耐で戦いに勝利をもたらす。
全身、胸から上、あるいは横顔だけが描かれるなど、ギリシャコインに最もよく登場する。スパルタ風の袖のない鎧を着、兜を被り、槍と盾を持っていることが多い。時々稲妻を投げ、左手にゼウスからもらった盾を持ち、勝利の女神ニケを伴うこともある。ふくろう・蛇・にわとり・オリーブが彼女に捧げられ、これらは彼女と一緒にコインによく登場する。
ペルガモンではアリーナ、イリオンではイリア、アレキサンドリアではアルゲイア、テッサリアではイトリアというように、彼女には多くの名前がつけられている。
パール(パール) 〈Baal〉
古代セム人の神。ギリシャ人は常にパールとゼウスを同一視した。
デメテル(セレス) 〈Demeter〉
豊饒・生産・農業・結婚の女神でゼウスの姉。
デメテルは、娘のペルセポネーが地下の国の支配者ハデスによって冥界へ連れ去られた時、嘆いて地上を枯れさせてしまった。ゼウスの仲介で、ペルセポネーは半年をハデスと冥界で過ごし(これが冬)、あとの半年を母と過ごすことになったが、この神話は、冬の間は自然の生命力も休息をとるという考えを体現したものとされている。
コインのデメテルは、穀物に囲まれたり、被われたりしている。時々、笏(しゃく)や穀物の穂を持っていたり、或いはたいまつを持って娘を探していたりする。また、2本のたいまつを持ち、2つの翼ととさかのある蛇に引かれる輪戦車の中に立っている姿もある。
ディオネ 〈Dione〉
ドドナ(ギリシャ北西部の町)にいるゼウスの妻。ディオネはおそらく天の女神。
コインには、月桂樹の王冠を被りベールを掛けて一人で登場したり、あるいは月桂樹を持ちベールを掛けてゼウスと一緒に登場する。
ディオニソス(バッカス) 〈Dionysos〉
バッカスとしても知られている。ディオニソスは、植物と果樹の神、ワインの神でもある。
コインには、ぶどうの枝を持ち、頭には蔦やぶどうの葉のリースを被って豹を連れ、或いは豹に乗って登場する。ぶどうの枝、蔓、杖がディオニソスのシンボル。
ディオスクリ 〈Dioskouri〉
ゼウスとレダの息子のカストルとポリュクスのことで、トロイアのヘレンの兄弟である。「神の双子」と呼ばれ、旅人、特に航海をする人々の守護神で、彼らを困難な状況から救い出す。旅人たちは、スパルタの神殿で予言を受け、その信仰はペロポネソス半島からギリシャ全体、シシリーとイタリアまで広まっている。
コインでは2人の兄弟は馬にまたがり、または槍を携え馬の傍らに立ち、星を乗せた卵型の兜を被っている。時々カベイロイと混同される。
エロス(キューピット) 〈Eros〉
愛の神で、アフロディーテに従っている。エロスは、裸で翼をつけ、若者か大人で、弓・矢かたいまつを持って登場する。時にイルカに乗って、あるいはペルセポネーをさらったハデスの輪戦車に乗って登場する。時々、2人のエロスが登場することもある。
ゴルゴンまたはメドゥーサ 〈Gorgo or Medusa〉
丸っこい醜い顔で、頭には髪の毛ではなく蛇が生え、豚の歯と大きな翼のある怪物で、その目を見ると人は石に変わると言われていた。英雄ペルセウスに殺され、その死の瞬間にペガサスとクリサオールが生まれた。
メドゥーサの顔は、数種のコインにメインテーマとして登場するが、盾の装飾にも見られる。
ヘリオス(ソル) 〈Helios〉
太陽神で、輪戦車で毎日空を東から西へ横断し、あらゆるものを見聞きしている。後にアポロと同一化された。
裸かクラミュスという短いマント姿で、頭には後光がさし、手袋・ムチ・たいまつを持って描かれる。二輪車に乗った姿を描いたコインもある。
ヘラ(ジュノー) 〈Hera〉
ゼウスの姉であり妻でもある。自然の女神で、古い時代から信仰されてきた。彼女は、神々の母と考えられていて、たいていは威厳のある年配の女性として描かれる。その髪は、王冠で飾られ、背中によくベールを垂らしている。「孔雀」が主な象徴。
ヘラクレス(ハーキュリー) 〈Herakules〉
ゼウスとアルクメスの息子で、最もよく知られた古代の英雄。古代の多くの物語や詩で、彼の強さ・勇気そして素晴らしい英雄的行為が題材となっている。
彼の横顔・上半身あるいは全身を描いたギリシャコインが数多く見られる。よく、自分で絞め殺したライオンの毛皮を頭に被ったひげのない青年として描かれている。たいてい裸で、首も太く、こん棒とライオンの毛皮と弓を持っている。こん棒・弓・弓入れがヘラクレスの象徴である。
ヘルメス(マーキュリー) 〈Hermes〉
ゼウスとマイアの息子で、神々のメッセンジャーだった。後に蛇に変わるが、リボンの巻きついた杖が伝達の道具であった。ヘルメスは、商人・芸術家・演説家・旅行者さらに泥棒の守護神だった。
ヘルメスの象徴としては、羽根飾りのついたつばの広い旅行者用の帽子・金のサンダル・翼のついたかかと・財布などがある。また、ヘルメスは、堅琴・ピック・吹奏楽器の考案者と考えられていた。主にヤシの木と亀がヘルメスに捧げられたが、数字の「4」と数種の魚のこともあった。
両翼で飾られた杖は、伝達の速さを象徴するもので時々コインに登場する。
メルカースまたはメルカルト 〈Melgarth〉
フェニキアで崇拝された。テュロス(またはタイヤというフェニキアの港)を支配する神で、イルカに乗って登場する。後にヘラクレスと同一化された。
ニケ(ビクトリア) 〈Nike〉
ギリシャの勝利の女神。長い衣装(キトン)を着た女性で、時々テリナのコインのように翼がないこともあるが、普通は翼をつけて描かれる。
リースとヤシの葉を持って、勝利の輪戦車や装飾されたトロフィーと一緒に描かれる。
パン(ファウナス) 〈Pan〉
牧羊の神で、ヤギの角・あごひげ・鼻・しっぽ・足を持ちほら穴に住んでいる。ぞっとする声の持ち主で、聞く人を恐怖に陥れる。
音楽が好きで、ヘルメスと同様に草笛や羊飼いの笛を発明したと考えられていたことから、アルカディアのコインではそれらを持って描かれている。
ポセイドン(ネプチューン)
ゼウスの兄で地震の神、海の支配者。たいていはイルカと銛、またはガレー船のへさきの装飾をつかんで片足で岩の上に立っている姿が描かれている。
ゼウス(ジュピター) 〈Zeus〉
オリンポスで最高位の神。ゼウスは、神々と人間の父であると考えられた。クロノスとレアの子で、ポセイドン・ハデス・ヘスティア・デメテル・ヘラと兄弟。姉であるヘラと結婚した。
ゼウスは、ギリシャ人世界全域で崇められ、ヘレニズム時代には、アモンやサラピスのようなその地方で最高位の神と同一化されていった。ゼウスには、彼を崇拝している地方により、あるいは彼の役割や神的な力に由来する様々な呼び名がある。
鷲と樫の木が、彼に捧げられた。笏を持ち、鷲・稲妻そして手のひらにおさまるくらいの小さな女神ニケが一緒に描かれる。オリンポスのゼウスは、オリーブの冠を被り、ドドノエのゼウスは、樫の木のリースを被る。
多くはあごひげを生やし、裸かそれに近い格好で、稲妻を投げつけたり、玉座に座っていたりする。
イシス 〈Isis〉
オシリスの妻でホルスの母イシスは、エジプトにおいて国の神であり、ヘレニズム文化の時代に地中海の国々で最高位の女神になった。
独特な飾り結びが付いた胸にひだのある長い衣装を身にまとい、彼女のシンボルの一つである古代エジプトの頭飾りを被った姿でコインに描かれている。楽器のシストラムはもう一つの象徴である。
カベロイ 〈Kabeiroi〉
古代ギリシャではなく、おそらくフリジアの神々(数はおそらく4人から8人)は豊作を約束し、水夫を守った。
ハンマーと蛇(バレアレス諸島のコイン)、あるいはリュトン(底部が動物の形をなす角杯)を持った姿でコインに描かれている。デオスクロイとよく間違えられる。
セラピス 〈Serapis〉
この名は、エジプトの神として崇められた雄牛アピスに由来する。セラピス崇拝は、プトレマイオスの支配下にあったメンフィスでおこった。この神は、多くの古代ギリシャの神々の特性とエジプトのオシリスの特性のいくつかを併せ持っていた。ひげを生やし、頭にモティウスを付けた姿で描かれている。
セラピスは病を治し、奇跡を行い、運命を超越し、現世と来世を支配し、そして太陽の神であった。
本日はここまでとなります。ここまで御読み下さり、誠にありがとうございました。
ギリシャ神話や古代ギリシャコインの面白さが、少しでも伝わりますと幸いです。
次回からは、ギリシャコインの貨幣単位や、重さの基準などをご紹介する予定です。
お楽しみに!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
資料:『Greek Coins and Their Value』
Seaby社刊/David R Sear著/SPINK社発行
コインペンダント専門店 『World Coin Gallery』
よろしければクリックお願いします。
コメント