こんにちは。
暑い日々が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
水分補給等、体調管理には充分お気をつけ下さい。
さて、今回より、「ギリシャコインの世界」は新しいシリーズがスタート致します。
内容は、古代ギリシャの貨幣制度を知る上で重要な、古代ギリシャの「重さの基準と貨幣単位」です。
今回は、古代ギリシャ世界の貨幣制度の変遷についての第1回目です。
それでは、よろしくお願い致します。
重さの基準と貨幣単位①
紀元前7世紀後半のイオニア人やリディア人のコインで使われた金属は、自然合金エレクトラムだけだった。それらのコインは、約14gのスターテルを基本とし、その「1/2」「1/3」「1/6」といった小さな単位のものも初めから造られた。
しかし、使用された金属が貴重なものだったので、広く流通させて一般市民が日々の売買に用いるというよりは、非常に高額な支払い(例えば傭兵)の為に使われていた。実際のところ、エレクトラムのスターテルは兵士の1ヶ月分の給料に相当したようだ。
1/3スターテル エレクトラム貨(紀元前6世紀 初期、リディア)
このような状況が、クロイソス王の治世(紀元前561年~546年)まで続いた。彼は、金貨と銀貨に基づく新しい貨幣制度を導入した。金のスターテルは、エレクトラムのコインと同価値であったので軽く(約8g)された。
また、小さな単位のコインも、「1/12」のものまで造られた。価値の低い銀のコインの種類は、金のコインよりもずっと多かった。発行された当初、銀のコインには金のコインと同じ図柄が彫られていた。
しかし、価値の範囲には大変幅があり、はかりの最小目盛りまでの小さい単位のものもあった。当時、金に対する銀の比率は、およそ銀13に対し金1の割合で、銀のスターテルの重量は、金のスターテルの1/10の価値に相当するように(約11g)に決められた。この制度での最小のコインは銀のヘミヘタトンで、価値は、金のスターテルの1/120であった。このことから、新しい複本位制度のもたらした価値範囲がどんなに広いものかがわかる。
この制度での不便な点としては、今日のペニー貨の半分以下の直径しかないような小さなコインを用いて毎日の売買をしなければならない煩わしさがあった。この不便さが解消されるのは、紀元前4世紀に、青銅のコインが小さな単位の銀のコインに取って代わった時だった。
農民から貢物を受けるリディア王クロイソス(クロード・ヴィニョン 画、1629年)
紀元前546年、クロイソス王がペルシャのキュロス王に敗北してリディア王国は滅亡したが、コインは以前と同じ制度と基準のまま新しい政権のもとでサルデス(リディア王国の首都)で発行され続けた。
しかし、紀元前6世紀の終わりまでには、ライオンと野牛が向き合う図柄の旧リディア型コインは、膝をあげて走る姿の射手(これは時の王を表す)が描かれたペルシャのコインに取って代わられた。
ペルシアン・ダリック金貨(紀元前420年頃)
今日、“ダリック”(ダリウス王)と呼ばれるこの金貨は、当初クロイソス王のコインと同重量であった。銀貨の“シグロス”というコインは、当初はスターテルの1/2で、“ダリック”の1/12の価値に相当した。その後、貴金属の相対的価値に変化があった時、正確な比率を維持するように重さは微調整された。
これらのコインは、アレキサンダー大王がペルシャ帝国を滅ぼすまでのほぼ2世紀間、少しずつ修正されながら引き続き発行された。
紀元前546年にリディア王国が滅亡した時、イオニアのギリシャ都市は、ペルシャ帝国による支配を認めざるを得なかった。だが、そのことはコインの発行には全く影響しなかった。
リディアと違ってギリシャ都市では、多くのコインにエレクトラムを使い続け、スターテルに加えて、実に96種ものコインが発行された。紀元前6世紀の終わりに銀のコインも導入されたが、エレクトラムコインの補助的な役割を果たしていたに過ぎなかった。
エフェソス、フォカイア、ミルエトなど、相当な数の造幣局が稼働していたようで、それらのどの都市で造られたコインかを判別、確定するのは難しい。エレクトラムコインの重量基準もいくつもあったので、この情況が一層複雑なものとなっている。スターテルについては、17,2g(エウボイア)、16,1g(フォカイアア)、14,1g(ミレシアン)があった。ギリシャ人は、これらの中からフォカイアアの基準を採用し、アレキサンダー時代に至る紀元前5~4世紀に大量のエレクトラムコインを造った。
フォカイア エレクトラム貨 1/6スターテル(紀元前360年~340年)
主に3つの造幣局が魅惑的で美しいコインの鋳造に関わった。マルマラ海にあるミレシア人の植民地キジコスは、200以上の異なったタイプのスターテルコイン(16,1g)のシリーズを発行した。フォカイアのイオニア人の造幣局とレスボス諸島の首都ミュティレネの造幣局は、おそらく1年置きではあるが、ヘクタイ(1/6スターテル、2,6g)のシリーズを長期的に発行した。
この2つの造幣局で生産されたコインは簡単に区別できる。フォカイアアのものには裏表に図柄がなく、レスボスのものには両面に図柄があり、時には凹刻のものもある。
レスボス 1/12スターテル(紀元前500年~450年)
本日はここまでとなります。
次回も、古代ギリシャの貨幣制度、重さの基準について記事を更新していきますので、よろしくお願い致します。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。熱中症対策はくれぐれも万全に、暑い夏を乗り切りましょう!!
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資料:『Greek Coins and Their Value』
Seaby社刊/David R Sear著/SPINK社発行
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