こんにちは。
夏の暑さも少しは和らいで、涼しい日が多くなって参りました。
ここのところ何かと忙しく、すっかりブログの更新が滞ってしまいました。
本日はコインの「ミントマーク」に関する話題を少し。
皆さんは「ミントマーク」という言葉をご存知でしょうか? 恐らく日常ではなかなか耳にしない言葉だと思います。簡単に説明しますと、コインがどの都市で造られたかを示すマークのことです。
ミントマークが採用されている国は、主に欧米諸国であり、国内に複数の造幣局を有している国にみられます。
日本の場合、明治時代に建設された造幣局は大阪本局のほかに、東京と広島に支局があります。しかし日本では通常流通貨の大半を大阪造幣局が製造しているためか、コインに造幣所を示す何らかの記号を打つことはありませんでした。その為、日本で日常生活を送っている上では、まず認識されないと思います。
ヨーロッパではコインにミントマークを打つことが一般化しており、古くは古代ギリシャ・ローマ時代にまで遡ります。
上はAD361年~AD363年にかけて、ユリアヌス帝治世下のローマ帝国で発行されたコインです。
牡牛の下部にはそれぞれの造幣都市を示す文字が刻まれています。
左から「CONSP (コンスタンティノポリス)」 「CVZ (キジコス)」 「ANT (アンティオキア)」です。
その後、ヨーロッパ各国では発行都市を示すミントマークを刻んだコインが多く発行されるようになります。
特に18世紀~20世紀初頭にかけての帝国主義時代には、ヨーロッパ域外のアメリカ大陸をはじめ、アジア、大洋州などの植民地コインにもミントマークは刻まれました。
アメリカの場合は国土が広く、また経済の急速な発展からコインの需要が増大したことで、各地に造幣所が設立されました。ドイツは1871年に、多くの領邦を統合して「ドイツ帝国」を成立させた後も、領邦各国が有していた造幣所をそのまま存続させたことから、多くのミントマークが現在まで用いられています。
また、スペインは国内だけでなく、金銀が多く採れた新大陸の各地に造幣所を設立したため、18世紀には数多くのミントマークが存在しました。
しかしミントマークの付け方は国ごとに異なり、注意が必要となります。例えば、発行都市の頭文字をミントマークとして刻む場合もあれば、都市の名前とは関係なく刻むケース(例えば首都は『A』など)、都市の名前そのものを刻む場合や、抽象的なマークやモノグラムを刻むものもあります。
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多くの場合、ミントマークはコインのデザインそのものを損なわないようにするため、ルーペで見なければ判別できないほど小さく刻まれている場合が多くあります。
特にイギリスとその植民地で発行されたコインの場合、デザインの一部分として組み込まれていることが多いため、確認するのに苦労します。
逆にラテン・アメリカ諸国の場合、他の銘文と同じ大きさで、はっきりと表記される傾向にあるため、容易に確認することができます。
現在、複数の造幣局を稼動させてコインを製造している国(アメリカやドイツ、オーストラリアなど)ではミントマークを刻んでいますが、国内の造幣所を一ヶ所に統合している国も多く、そうしたところではミントマークを省略している場合もあります。
その要因としては、ヨーロッパ諸国の植民地が独立したことや国内の行財政改革、さらに根本的なところではコインの需要が減ってきていることが考えられます。
参考として、以下に主要各国のミントマークをいくつかご紹介します。主に19世紀から現在まで使用されているものがほとんどですが、中にはフランスのように既にミントマークの使用を取りやめた国もあります。
・フランス
A : パリ
B : ルーアン
BB : ストラスブール
D : リヨン
K : ボルドー
L : バイヨンヌ
M : トゥールーズ
・ドイツ (1871年のドイツ帝国成立以後)
A : ベルリン
B : ウィーン
(※1938年~1944年 ナチスドイツによるオーストリア併合期のみ使用)
D : ミュンヘン
E : ミュルデンヒュッテン
F : シュトゥットガルト
G : カールスルーエ J : ハンブルク
・アメリカ合衆国
C : シャーロット
CC : カーソンシティ
D : デンヴァー
O : ニューオーリンズ
P : フィラデルフィア
S : サンフランシスコ
W : ウェストポイント (ニューヨーク)
・オーストラリア
A : アデレード
B : ブリスベン
C : キャンベラ
P : パース
S : シドニー
M : メルボルン
・英領インド
B : ボンベイ (現在のムンバイ)
C : カルカッタ (現在のコルカタ)
L : ラホール
M : マドラス (現在のチェンナイ)
・エクアドル
HEATON BIRMINGHAM : ヒートン社、バーミンガム (イギリス)
LIMA : リマ (ペルー)
Mo MEXICO : メキシコシティ (メキシコ)
PHILADELPHIA : フィラデルフィア (アメリカ合衆国)
このほかにも、デンマークでは「♥」がコペンハーゲン造幣局、キューバでは「鍵」マークがハバナ造幣局を示すマークとして用いられています。
もちろん、時代によってその用いられ方、表記のされ方は変化しますが、民間の造幣会社が造ったコインにもミントーマークが用いられ、今尚継承されています。(FM : フランクリンミント(米)、H : ヒートン(英)など)
皆さんも、お手持ちのコインをよ~く見て下さい。もしかしたら、片隅に小さな小さなミントマークが隠れているかも知れませんよ。
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はじめまして。コメントいただきありがとうございます。
現在、日本の造幣局は大阪工場と埼玉工場の二か所が存在しますが、製造場所を区別するためのミントマークはつけられていません。
通常の流通用貨幣をはじめ、多くのコインは大阪工場で製造されています。
ご参考になりましたら幸いです。
投稿情報: フジタク | 2021/05/23 22:57
初めまして。最近コインに興味を持ち始めたものです。
ミントマークについても最近知ったのですが、日本の記念コインなどにもミントマークというのはついていないものなのでしょうか?東京オリンピック2020の貨幣を購入しましたが、それらしきもの(アルファベット1文字など)が見当たりませんでしたので、もしご存知でしたらお伺いしたいです。
投稿情報: てる | 2021/05/18 09:54