こんにちは。
今年の8月も、いよいよ最後の週となりました。
暦の上では既に秋ですが、まだまだ残暑厳しい日が続いていますね。
引き続き、体調には気をつけて頑張りましょう。
さて、本日は古代ギリシャコインの「重さの基準と貨幣単位」シリーズの最終回です。
ここまで御読み下さり、誠にありがとうございました。
本日は青銅コインに関する記事です。
それでは、宜しくお願い致します。
重さの基準と貨幣単位③
これまで触れなかった重量基準がある。
それは、シシリーの青銅リトラの基準である。
シシリー島独自の貨幣であるリトラは、オボルより少しだけ重い小さな銀のコイン(重さ0.86g)であった。
そこで、オボルコインと区別する為にその形を変える必要があった。シシリーのギリシャ人は、それを煩わしいと思ったに違いない。
早くも紀元前5世紀の中頃には、青銅リトラの鋳造を思いついた。この青銅リトラは、取り扱いに不便さを感じるほど小さくなく、またオボルと間違える危険もなくなった。どの都市が最初にこのような手段をとったかははっきりしていないが、島の北海岸にあるヒメラの造幣所が青銅コインを鋳造したことは間違いない。
シシリー リトラ銀貨
(紀元前430年頃)
何種類かの初期青銅リトラは、少々扱いにくかった。そこで、日々の流通に適するように改良された。こうして、青銅コインは、初期段階から代用貨幣として認められるようになった。また、発行元が決めた流通価値は、コインそのものの価値よりもかなり高かった。
紀元前5世紀の後半に青銅貨幣を採用したシシリーのギリシャ諸都市は、この貨幣が飲食物や衣服の売買といった都市生活の日々の取引に非常に役立つものであることを認識していた。
あらゆる品物やサービスと交換する為の便利な媒体という、現代貨幣の持つ役割の起源は、2400年前のギリシャ・シシリーにある。
バッコス神への奉献の儀式
(サー・ローレンス・アルマ=タデマ 画 1889年)
青銅リトラは、12のオニキアに分割された。
ローマのアンシア(1ポンドの1/12)、トロイのオンス(1ポンドの1/12)、そしてインチ(長さ1フィートの1/12)はこれに因んでいる。
ペントキオン(5オニキア・5ペレット)、テトラス(4オニキア・4ペレット)、トリア(3オニキア・3ペレット)、ヘクサス(2オニキア・2ペレット)そしてオニキアそのもの(1ペレットの価値の印)に加えてヘミトロン(6オニキア・6ペレットの価値の印)も鋳造された。
初期のシシリーの青銅コインで最も多く造られたものは、リトラまたは1/4リトラであった。
シシリー(ヒメラ) リトラ銀貨
(紀元前460年~紀元前400年)
シシリーから始まった卑金属貨幣の使用は、ギリシャのあらゆる地域へと拡まっていった。
紀元前400年代の後半にはほとんどの造幣所で青銅コインを発行し始めたが、アテネのように新奇な物事を導入するのを嫌がるところもあった。紀元前5世紀の初めより、ラウリオンの鉱山から充分な量の銀の供給があったアテネでは、紀元前4世紀に入るまでオボルのような小さなコインを大量に鋳造していた。
しかし、アテネも最後には青銅のコインが有用であることを認め、紀元前4世紀後半から青銅コインの鋳造を開始した。
アテネ 青銅貨
(紀元前3世紀~紀元前2世紀頃)
ギリシャ青銅貨の研究に関しての難問の一つは、銀貨との価値の関連性を調べても、それらの価値をはっきりと示したものがほとんどないということである。残念なことに、ギリシャの造幣所のほとんどが、青銅コインを導入したシシリーの人々の習慣(※既知の分数で最小の銀コインのどれだけに当たるかを示す)を守っていなかった。
ここで注目すべきは、紀元前4世紀後半に南イタリアのメタポンテオンの造幣所で造られた青銅貨である。この青銅貨には、“ΟΒΟΛΟΣ”と刻印があり、この青銅貨が1オボルと同価値であることが分かる。このことから、ギリシャ青銅貨のほとんどはオボル銀貨の分数か、稀には倍数に相当するのではないかという推測ができる。
アテネではオボル貨は8チョルコスに分けられ、最小の青銅貨1枚がおそらく1チョルコスで、大きくなるとその倍数(例えば、ディ[=2]チョルコス、テトラ[=4]チョルコスというように)であったのではないかと推測されている。
メタポンテオン オボル青銅貨
(紀元前425年~紀元前350年頃)
裏面に、“ΟΒΟΛΟΣ”の刻印がある。
いつの日にか、数多いギリシャ青銅貨の一つ一つに正確な呼び名がつけられるような、充分な情報が得られることを期待したい。ミリメーター、またはインチで直径を測るだけの現在のシステムでは不充分である。
本日はここまでとなります。
古代ギリシャの「重さの基準と貨幣単位」シリーズを御読み下さり、誠にありがとうございました。
次回は、「ギリシャコインの年代」に関する記事をお届け致します。
次回からも、宜しくお願い致します。
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資料:『Greek Coins and Their Value』
Seaby社刊/David R Sear著/SPINK社発行
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