こんにちは。
年が明けて日が経ち、御正月気分も落ち着いてきましたね。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
昨今は寒波が到来し、インフルエンザも流行しています。御身体には気をつけて、寒さ対策、風邪対策は万全にして下さい。
さて、今回の話題は「ミントセット」についてです。
ミントセットとは、一般的に造幣局が鋳造したコイン一揃えをパッケージ化したものをいいます。
元々は、鋳造コインの「見本」として銀行や政府高官、外国造幣関係者や収集家の為に特別に造られたものでした。しかし、後に一般収集家向けにも販売されるようになり、現在では世界中の造幣局がミントセットをほぼ毎年製作、販売しています。
イギリス ロイヤルミントのミントセット(2012年)
特別なケースに入れて、世界中のコイン収集家に向けて販売される。
通常、ミントセットは造幣局で封をされ、銀行等を介さない為、真の意味での未使用貨といえます。
しかし、民間でパッケージされ、ミントセットとして一揃えにされたものもある為、注意が必要です。
ここからは、いくつかのミントセットのタイプを御紹介します。
ミントセット(未使用セット) : Mint Sets
一般的なタイプのセットで、造幣局で鋳造後、全く未使用の状態のまま包装される。
内容は、一般流通コインの完全未使用一セットである。
選りすぐられた鋳造コインとして、最高品質の見本が提供される為、通常厳格な検査を経て一揃いのセットが組まれる。
歴史的に有名なミントセットとしては、英国の「マウンディセット(Maundy Sets)」がある。
マウンディセットとは、毎年、キリスト教の儀礼である「洗足儀礼」に際し国王から貧民に配られた、1ペニー・2ペンス・3ペンス・4ペンスの小型銀貨のセットである。
マウンディセット(1900年) 肖像はヴィクトリア女王
このセットを構成する4種類のコインは、通常のコインとは異なり、青銅ではなく銀で特別に鋳造されたものである。
その為、1ペニー銀貨に至っては直径11.2mm、量目0.47gと超小型になっている。銀の含率は925/1000である。
このセットは小さな白い袋に入れられ、毎年復活祭のある聖金曜日の前日、洗足木曜日(Maundy Thursday)に、ウェストミンスター寺院で儀式を執り行う国王と同年代の特定貧民に配られた。チャールズ2世時代の1670年から毎年発行されており、現在でも多くのセットがコイン収集家達の間で取引されている。
標本セット : Specimen Sets
今日のプルーフセットの先駆けとなったセット。高くて鋭角なワイヤーリムに沿って2回以上打たれ、肖像や紋章、銘字の「つや消し仕上げ」を施したコインがセットになっている。しかし、その仕上げは肉眼でははっきりしないものである。
このセットの本来の目的は、世界各国の君主や要人、造幣局の技術者に特別な鋳造技術を用いた高品質なコインの見本を提供することであった。
プルーフライクセット : Proof-like Sets
古銭学の分野では、比較的最近になって現れたものである。
1950年代中期、ロイヤル・カナディアン・ミント(Royal Canadian Mint)がプルーフコインに類似した品質を持つコインを選別し、一つのセットとして収集家に販売したことからはじまる、いわば「擬似プルーフセット」である。
しかし、このプルーフライクのコインには徐々にヒビが入り、エッジも丸くなることがあった。そもそも、これらのコインはプルーフではない為、2度打ちがなされていない。
ただし、プルーフコインと同様の品質を持つセットとして、造幣局が公認した例はいくつかみられる。
1970年代末にオーストリアンミントが収集家向けに鋳造した、南アフリカ連邦のクラウン貨や100シリング貨等もその例であり、これらは「スペシャルセレクト(Special select)」と呼ばれた。
プルーフセット : Proof Sets
プルーフセットのコインは、特別に磨かれた金属板の上に2度打ちされ、さらに最高品質の打ち型(Dies)を使用して鋳造される。現在では完全な鏡面状仕上げの下地と、つや消しの紋章、肖像、銘字から成るタイプのものが主流である。
プルーフコインのセットは、造幣局が入念に、芸術的美しさと技術力の高みを追求して鋳造されたものであり、造幣局の誇りをかけて世に送り出される「芸術作品」といえる。英国のプルーフセットの付属説明書には、『プルーフコインは造幣芸術である』と述べられているほどである。
その為、流通用コインの未使用貨をセットにしたミントセットと比べ、数倍の価格で販売・取引される。
アメリカ合衆国で毎年製造・販売されるプルーフセット
アメリカのプルーフコインはクラッドタイプが主流である。
また、プルーフセットは一般流通用のコインとは異なる目的(収集家向けの販売)で鋳造される為、流通用コインが発行されなかった年であっても、プルーフセットではその年銘のコインが存在するという場合があることも重要な点である。
以上が、ミントセットの種類です。
上記のプルーフライクセットと、本物のプルーフセットを識別するには、多くの実物を目の当たりにして経験を積む他なく、コイン収集家でも判別は非常に難しいといえます。
ところで、ミントセットは造幣局がコインを鋳造してすぐにセットとして包装すると述べました。
かつては、柔かいポリビニールのパッケージに入れられていたこともありましたが、ポリビニールが未使用コインを痛めてしまう危険性があると判明してからは、硬質で化学反応を起こさないプラスチック素材が使用されるようになりました。
通常、透明なプラスチックで密閉、保護されたミントセットを開封することはまずありませんが、包装を破ってコインを取り出し、セットをバラしてしまうと価値が減少してしまいます。
造幣局製のミントセットやプルーフセットは、最初に包装された状態、つまり「セット」としての存在そのものに価値があると捉えられているからです。
また、プルーフセットなどは封じ込まれている間にコイン表面が変色する場合がありますが、それはそのまま保存しておくことが望ましく、取り出して洗浄することは厳禁です。
しかし、英国のマウンディセットや戦前の金貨プルーフセット等は、鋳造された時代的にビニールやプラスチックの梱包がなされていない場合もあります。
金貨のミントセットなどは、皮張りやベルベット(ビロード)張り等、特別仕様の専用ケースに納められている場合がほとんどです。その場合は、その高級感溢れるケースも付属させて一つの「セット」とみなされ、特別な価値を有します。
本日はここまでとさせていただきます。
寒さが益々厳しくなってまいりました。
どうか、御風邪等召しませぬよう、暖かくしてお過ごし下さい。
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