こんにちは。
暦の上では春ですが、まだまだ寒さは厳しいですね。冬から春への移り変わりを実感できず、衣替えももう少し先のようです。
今月は英国の女王エリザベス2世が即位されて70周年を迎えられました。
英国史上最長であることはもちろん、現在の世界中の君主でも最長在位期間を誇ります。この記録は当面塗り替えられることはないでしょう。世界の歴史上、在位期間が70年を超えた君主は指折りで数えるほどしかいません。
日本で言う銀婚式や金婚式と同じく、イギリスでは25周年をシルバージュビリー、50周年をゴールデンジュビリーと表現しますが、エリザベス女王はさらに超えて60周年=ダイヤモンドジュビリーを過ぎ、70周年となる今年は「プラチナジュビリー(Platinum Jubilee)」を迎えます。
イギリス 2002年 御在位50周年(ゴールデンジュビリー) 5ポンド銀貨
この記念すべき節目の年、イギリスと英連邦諸国では数々の祝賀行事が予定されています。歴史に残るセレモニーとして、大規模なイベントや記念式典、記念コインや切手の発行が計画されているようです。
70年前の1952年2月6日、父王ジョージ6世は56歳で崩御。長女のエリザベス王女は体調不良の父王に代わってケニアを訪問中でした。父王の崩御により、25歳の王女はアフリカの地で英国女王となったのです。
この経緯はNetflixのドラマ『The Crown』(2016~)でも描かれています。
出発する際は王女だったエリザベスが女王としてイギリスに帰国して以降、現在に至るまで君主としての務めを継続しています。1953年6月2日にウェストミンスター寺院で催行された戴冠式はテレビ中継され、英国中の人々が自宅から新時代の幕開けを見守りました。
イギリス 1953年 女王戴冠記念 5シリング白銅貨
20世紀半ばから2022年に至るまで、イギリスと世界はめまぐるしく変化し続けています。その中で常に女王として君臨するエリザベス2世の姿は、多くの人に変わらない秩序を感じさせ、安心感を与えてきました。イギリスをはじめ世界中で発行されるコインや紙幣にエリザベス女王の肖像が表現されていることは、そこに権威と信用、不動の価値が付与されていることを視覚的に示しています。
オーストラリア 1999年 1ドル銀貨
歴代四種類のコイン肖像。1980年代~1990年代に採用されていた三代目の肖像(*←画面の右端)はラファエル・デイヴィッド・マクルーフ氏による作品であり、威厳と気品にあふれた妙齢のエリザベス2世を表現した、女王らしい肖像として人気があります。またイアン・ランク=ブロードリー氏による四代目の肖像も、老齢に達した女王を写実的に表現した作品として高く評価されています。
伝統的で厳格なイメージとは異なり、女王は自ら自動車を運転したり、競馬に親しむなどプライベートな面も広く知られています。人間的な部分が知られていることも、女王が敬愛を集める大きな要因となっています。
毎日多くの人々と接する女王は英国的なユーモアに富んだ人柄も知られています。
かつてスコットランドのバルモラル城に滞在した際にお忍びで散策していたところ、アメリカ人観光客に地元住民と間違われ「あなたは女王に会ったことはありますか?」と問われると、傍らにいた護衛官を指さし「私はないけど、この人は会ったことがあるわよ」と答えたそうです。
(デイリーメール紙, 女王の元警護官リチャード・グリフィン氏の回想)
1926年生まれの女王は今年4月21日に96歳となります。英国の歴史上、最高齢の君主であるエリザベス2世は、過去のエリザベス1世やヴィクトリア女王と同じく英国史に残る偉大な女王として記録されるでしょう。
日本でも今年の6月には、女王の生涯を追ったドキュメンタリー映画『エリザベス 女王陛下の微笑み』が公開される予定です。
昨今は新型コロナウィルスに感染されるなど健康面での不安もみられますが、それでも宮殿内ではできる限りの公務を継続されているようです。どうか末永くお元気で、変わらぬお姿を拝見したいものです。
そして多くの人々と共に、この歴史的な年をお祝いできれば幸いです。
エリザベス2世
(ナショナルポートレイトギャラリー, 1952)
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