気候も変わりやすく大変気まぐれな海です。
詩人ホメロスはこの海を「葡萄酒色の海」と呼びました。
土地のやせたギリシャではこの海を越え植民地を設け、通商する必要がありました。
小麦とオリーブと知性と技術の行き交うこの海を囲んで暮らす人々が、海の神ポセイドンを大切にし、そのご機嫌をとろうとしただろうことは察しがつきます。
父クロノスを倒したとき、ゼウスは天空を、ハデスは冥界を、ポセイドンは海と河川を司ることになりました。
ポセイドンは非常に短期で衝動的な、子供のような性格でよくけんかをしました。
しかし、機嫌のよい時は、ユーモアあふれる明るさを持ち、タコ・イカ・クラゲ・などの変わった生物を創り出しました。ポセイドンは、海の女王にアンビリトテというニンフを娶りました。彼女に浮気を詫びるため、イルカをプレゼントしたことがあります。
これは、人々が海に、生命を育むやさしき存在でありながら、一方では災害を引き起こす気まぐれな畏れ多き存在という、二律背反した感情を抱いていたことをそのまま表しているようです。
ポセイドンは海のほかに馬の神でもあります。
これも女性のために創ったのですが、以降三つ又の矛とともに彼の聖なるモチーフとなりました。
ポセイドンはデメテルを恋していました。
もちろん大変しつこく強引に迫りました。
デメテルは贈り物を要求しました。
「陸の生き物で、美しいもの」というのが条件でした。
どうせ、イカやウミウシなど奇妙なものしか創れないだろうと高をくくったのですが、ポセイドンは、馬を創ったのです。
デメテルはその出来栄えに感激しました。
ポセイドンはすぐにその馬を増やし、世界で初めての馬の群れをデメテルに贈りました。
ちなみにその時に失敗作を放り出したままだったので、キリンやシマウマ・ラクダ・ロバができたのだそうです。
馬は自分でも大変気に入ったので、海にも碧色で白いたてがみの馬の群れを作り、それにまたがると、夢中になってすっかりデメテルのことなど忘れてしまいました。
海を見つめると、その碧色の馬たちが、波のいただきに白いたてがみをひるがえしているように見えるのだそうです。
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