今週で第三回をかぞえます“古代コインのわき役たち”・・・
今回は『リュトン』について話していきたいと思います。
古代コインのわき役たち(3)
<リュトン>
リュトン(rhyton)とは古代の器の一種で、主に儀礼や祝宴など、特別な催事の折に使用されました。
角状または鹿・山猫・羊・山羊などの動物の頭部を模した形の杯で、上部に大きな注入孔、底部または突端部に小さな流出孔があります。素材として主に用いられたのは獣角・金属・石・木・陶器などです。
リュトンは底部の前方にある動物などの口の所に小さな穴が開いていて、そこをお酒などが通る事に意味がある物です。
リュトンは主に古代ペルシアや古代ギリシャなどで、儀式において注入孔から注ぎ入れた酒などの液体を他の容器に注ぎ分けるのに用いられました。リュトンという語は古代ギリシャ語の「流れる」という意味の動詞(ῥυτόν)に由来しています。
古代の人々は、リュトンを通った酒、ワインなどは神聖な力が宿ると信じていました。 リュトンのモチーフとされる動物は、現在とは若干異なる各地の星座に出てくるものであったり、古代都市の守護神の動物などで、おそらく、自分の産まれ月や、都市の守護神の動物などであったものと考えられています。
この為、使用された地域や時代によって、リュトンの儀式的意味合いは大きく異なります。
古くは動物そのものをかたどった「水差し」のような物でしたが、「角杯」で酒を飲む風習などと融合していき、独特な造形を見るようになったのです。 古代の都市部で、顧客に酒を振る舞い、交易の相手などをもてなす内に、多彩な文化が入り混じっていき、造形も、多種多様に変化していきました。 時代が下ってくると、都市部などで、顧客をもてなす為に、趣向を凝らした造形になっていきますが、だんだん酒飲みの享楽の目的のお飾りに変わっていってしまいました。
古代ローマでは、守護神ラールがリュトンを高々と掲げて、お酒を給仕する様子の彫像があります。 詳細な意味合いは不明ですが、古代ギリシャやローマの都市ではバッカス神のお酒やワインを、「神聖さを高める必要性の高い場合」に用いていたようでした。
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