こんばんは!
今週で「ギリシャコインの世界」も第八回を迎えます。
先週から、「ギリシャ史概論と貨幣の発展」を終えて、「ギリシャコインのタイプ」の章へと入っておりますが、本日もその続きを書いていきたいと思います。
ギリシャコインのタイプ
シシリーのセリヌスでは、セロリがいつもコインの表に描かれた。同様に、エーゲ海のメロス島ではリンゴが描かれた。こういった例は、ギリシャ世界全域の多くの造幣所のものに見られる。
アレキサンダー大王の死後、ヘレニズム国の出現とともにギリシャコインの図柄は、今までに無い大きな変化を見せる。前五世紀前半から、マケドニア王の名が常にコインに刻まれるようになったが、アレキサンダー大王を含め、その肖像がコインに描かれたことはなかった。しかし、アレキサンダーの後継者のうちの幾人かが、コインに自分の肖像をのせると、国王や女王の頭部を描くことが、紀元前3世紀から1世紀にかけてのギリシャコインの典型的な特徴となった。何故、紀元前5世紀から4世紀にかけての強力な僭主が、自分達の肖像が描かれた貨幣を発行して、自分達の身分を賞賛したり、自分達の容貌を永遠に残そうとしなかったかは今でも謎である。
主な肖像画のコインは、エジプトのプトレマイオス王朝・シリアのセレウコス王朝・マケドニアのアンティゴネ王朝で作られた。残念なことに、プトレマイオス王朝は、王朝の終える時までほとんどの銀貨にその始祖プトレマイ・ソテルの肖像を描くという習慣があった。このことで、このコインの面白さが半減するとともに、コインがどの王の時代に属すものかわかりにくくなってしまった。一方セレウコスのコインは、二百年以上もの間王や女王の肖像を私たちに示してくれる。
ここで、バクトリアとインドーかつてはセレウコス王国の東端に位置し、紀元前3世紀中頃に独立したーを支配していたギリシャ人が鋳造した素晴らしいコインについて言及すると、支配者が実在していた証拠が唯一コインに描かれた彼らの肖像であるというのが面白い。
マケドニアのアンティゴネ王国は、前3世紀から2世紀の間に、見事な肖像の描かれたコインをいくつか造った。なかでもデメトリオス・ポリオケトス・フィリップ5世・ペルセウスのテトラドラクマは際立っている。同じ頃、ペルガモン王国・バイスニア・ポントスも、ヘレニズム時代のコインの肖像画法に大きく貢献した。
これらの王国では、ほとんどの宗教的シンボルがコインの裏側に“格下げ”され、各王朝の守護神も裏面に描かれるようになった。初期のセレウキド王国では、アポロがよく用いられた。前3世紀中頃の銀・青銅コインに、デルフィ神殿の半円形の石の祭壇に座っているアポロが多く登場する。ゼウスを象徴とする稲妻とその上に立つ鷲は、エジプトのプトレマイオス王朝のコインの裏面に決まってあらわれる図柄で、あごひげをはやしたゼウスの顔も青銅コインの表面に描かれた。
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資料:『Greek Coins and Their Value』
Seaby社刊/David R Sear著/SPINK社発行
コインペンダント専門店 『World Coin Gallery』
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