こんにちは。
暑さは相変わらずですが、いかがお過ごしでしょうか。
日が出ている時間も段々と短くなっているようですね。
まだ暑い日は続きますが、もう少し経てば涼しい時期になりますので、頑張りましょう。
さて、本日は前回に引き続き、古代ギリシャコインの「重さの基準と貨幣単位」についての記事です。
今回も、古代ギリシャ世界の貨幣事情についてご紹介いたします。
それでは、よろしくお願い致します。
重さの基準と貨幣単位②
紀元前6世紀の中頃、貨幣を発行する習慣がギリシャ本土全体に拡がり、紀元前550年以降の10年間に多くの造幣所が鋳造を開始した。
エレクトラムは、ヨーロッパのギリシャ人には採用されずに、当初から銀が使われた。エイギナ・アテネ・コリントそしてエウボイア人の都市であるカルキア・エルトリア・カリストスが最初に発行したコインは、全てこの時代に属している。
この頃、ギリシャコインの発展に主導的役割を果たした主要な重量基準が生まれた。
アッティカ基準は、最初8,6gのディドラクマに基づいていたが、後になって17,2gのテトラドラクマを基準とするようになった。
この重量基準は、アテネ・シシリーそして北エーゲ海地域で広く採用された。これは、紀元前5世紀にアテネが大いに繁栄し、政治の上でも重要になったことが影響している。後に、アレキサンダー大王も自分の巨大な帝国にこの重量基準を取り入れた。
コリント スターテル銀貨(紀元前500年~550年)
コリントの基準は、アッティカのドラクマと同じ重さの8,6gのスターテルを基にしていたという点で、アッティカの基準と密接な関係があった。
しかし、コリントのスターテルは2,9gの3つのドラクマに分割された。この基準に則ったコインは、かなり長い間生産された。後期に造られたさらに小さなコインは、ギリシャ北西部・イタリアそしてシシリーなどにある大きな植民地で鋳造された。
エイギナの基準は、アッティカとアルゴリアの海岸線の間に位置する海国からその名がとられた。おそらく、そこには初期ギリシャコインの造幣局があったのであろう。エイギナのスターテルは普通、約12,3gで、ペロポネソス・中央ギリシャそして特にエーゲ海地域(シクラデス群島・クレタ島・小アジアの南西)で広く採用された。紀元前5世紀の中頃にアテネが台頭すると、エイギナの影響力は政治的にも経済的にも薄れたが、この重量基準は各地で使用され続けた。
エイギナ スターテル銀貨(紀元前404年~340年)
初期から使われていた他の重要な基準としては、南イタリアのギリシャの植民地で使われたアカイア基準(8gのスターテル銀貨)、北エーゲ海とシシリーにあるエウボイアの植民地で採用されたエウボイア基準(17,2gのスターテル)などがある。東方では、クロイソスの合金(エレクトラム)に由来するペルシャの基準がキプロスの造幣所を含め、アカイアの支配下にある小アジアの多くの造幣所で固く守られていた。その後、紀元前400年頃にはローディアンの基準が小アジアでかなり普及し、タレスのアイノスでも採用された。これは、15,6gのテトラドラクマを基準としたものであった。
アッティカ エイギナ スターテル銀貨
(紀元前510年~490年)
レバント地方のツドン・デュロスそしてビブロスは、フェニキアの基準(7gの銀のシケル)を使っていた。
北方ギリシャの地域でも同じような基準が見られるが、フェニキアの基準とはほとんど関係がなかったものと思われる。北方ギリシャの重量基準に関してははっきり分かっていない。時々、同じ造幣所で種々の基準が同時に使われていたようで、複雑に関係する3つの重量基準が存在していたことは確かである。
この3つの基準は、総称して“トラキア―マケドニア”と呼ばれている。それぞれの基準内に、大きな取引きから市場での日々の買い物まで、それぞれの用途に合わせて様々な貨幣単位があった。
パルテノン神殿のレリーフを友人達に披露するフェイディアス
(サー・ローレンス・アルマ=タデマ画 1868年)
アテネのテトラドラクマ、コリントのトリドラクスターレル、エイギナのデイト‐は、他の単位よりも定期的に造られた。小さな貨幣が好まれた地域もあったようで、紀元前5世紀の間、ペロポネソスの多くの造幣所では、トリオボル(ヘミドラクマ)より大きいものは滅多に造られなかった。
逆に大きい貨幣が好まれた地域もあり、北方のトラキア―マケドニアの一部地域では定期的に銀のオクタドラクマ(29g)・ドデカドラクマ(40,5g)を鋳造し、さらにギリシャ銀貨全体で最重量となる2倍のオクタドラクマまで造った。
シラクサ デカドラクマ銀貨(紀元前400年頃)
次の表は、アッティカの重量基準を基に鋳造された単位コインを示している。これらすべての単位コインが定期的に発行されていたわけではない。(例えば、デカドラクマは特別な機会にのみ鋳造された。)
また、いくつかの造幣所はオボロースを分割した小さい単位のコインは鋳造しなかった。表で示された重さは、想像ではなく現実に得られた数字で、ほぼ正確である。
デカドラクマ=10ドラクマ:43g
テトラドラクマ=4ドラクマ:17,2g
ディドラクマ=2ドラクマ:8,6g
ドラクマ=6オボル:4,3g
テトラオボル=4オボル:2,85g
トリオボル=3オボル:2,15g
ディオボル=2オボル:1,43g
ヘミオボル=1/2オボル:0,36g
トリヘミオボル=3/2オボル:1,07g
オボル:0,72g
トリタルテモリオン=3/4オボル:0,54g
トリヘミタルテモリオン=3/8オボル:0,27g
テタルテモリオン=1/4オボル:0,18g
ヘミタルテモリオン=1/8オボル:0,09g
※1/2=ヘミ 1/4=タルテ 1/8=ヘミタルテ(ヘミ[1/2]×タルテ[1/4])
10=デカ 4=テトラ 3=トリ 2=デイ
この体系内の最小のコインであるヘミタルテモリオンは、最大のデカドラクマの1/480と示されている。
他の重量基準でも同様な表を作成できるが、いくつかの体系ではスターテルが1/2、1/4の代わりに1/3、1/6、1/12に分けられていることを忘れてはならない。
本日はここまでとなります。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
次回は、古代ギリシャの「重さの基準と貨幣単位」の最終回となります。
よろしくお願い致します。
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資料:『Greek Coins and Their Value』
Seaby社刊/David R Sear著/SPINK社発行
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