こんにちは。
すっかり歳の瀬ですね。今年の年末は例年以上に寒さが厳しいようです。
歴史的な出来事が多く話題に事欠かなかった2022年(おそらくそれ以前もですが・・・)も残すところあと僅か。来る新しい年がどのような一年になるのか注目です。
今年の大きな出来事の一つといえば、以前ブログでもご紹介した英国女王エリザベス2世(在位:1952-2022)の崩御でした。在位70周年を祝うプラチナジュビリーを経て壮麗な国葬と、まさに現代イギリスを代表する君主の治世として偉大な締めくくりでした。ひとつの時代の終焉を目撃したような感慨もあり、他国の人間ですが厳かな気持ちにもなりました。
コインの肖像でお馴染みのエリザベス女王ですが、今年は英連邦以外の人々が女王に思いを馳せた年といえるでしょう。今年はエリザベス女王のお姿が刻まれたコインがいつも以上によく売れたようです。
そして今年は代替わりを経て、英国王となられたチャールズ3世の治世が始まった年でもあります。エリザベス2世は英国史上最も在位期間の長い君主でしたが、チャールズ3世はプリンス・オブ・ウェールズ(ウェールズ公=皇太子)の地位に最も長く在った人物でした。
今月より国王チャールズ3世としてのコインがイギリスで発行され、大きな話題となりました。今後は全てのコイン肖像を順次切り替えていく模様です。
イギリスのコインに国王が登場するのも70年ぶりとなり、歴史的な瞬間です。
チャールズが初めてイギリスコインに登場したのは、1981年にダイアナ・スペンサー嬢と結婚した際の記念コインでした。
イギリス 1981年 25ペンス銀貨
その後も度々記念貨に登場しましたが、今年ようやく「国王」としてコインに表現されることとなったのです。
CHARLES III・D・G・REX・F・D
(=チャールズ3世 神の恩寵たる王 信仰の守護者)
1948年生まれのチャールズ3世は73歳にして王位を継承したため、コインの肖像も年相応の老紳士らしさを出した風合いになっています。この肖像は彫刻家マーティン・ジェニングス氏によって手掛けられ、チャールズ3世自ら承認したものです。肖像の首部分には彫刻家のイニシャル「MJ」銘が配されています。
周囲の称号は母女王とほぼ同じですが、ラテン語による女王(=REGINA)が王(=REX)になっている点は注目です。英国歌「God save the Queen」が「God save the King」に変更されたことが話題になりましたが、コインでも70年ぶりに王の称号が再登場しています。
イギリスでは君主の代替わりによってコインの肖像を先代の反対にするという慣習があります。エリザベス2世は右向き肖像でしたので、今回のチャールズ3世は左向き肖像となっています。
また、女王がティアラを戴いていたのに対して、国王は王冠を戴かない自然体の姿である点も伝統を踏襲しています。
イギリスでは今月から50ペンス白銅貨が通常貨として発行・一般流通しています。
日本でも天皇陛下の代替わり・元号改元にあたってコインの年号が「平成」から「令和」に切り替わり、これがお釣りの中に混じっていると新しい時代が進んでいることを実感しました。今後はイギリス、英連邦諸国の市中でも同じ現象がみられるでしょう。
今月はイングランド銀行からも新紙幣のデザイン発表がありました。2024年までに現在の紙幣に採用されている女王エリザベス2世の肖像は、国王チャールズ3世の肖像に切り替わるようです。
来年以降はカナダやニュージーランド、オーストラリアのコイン・紙幣の肖像がどのようになるのか注目です。これらの国々ではまだ新しい肖像デザインの発表はありません。長年のエリザベス2世への愛着から、または新国王となるチャールズ3世に対する不支持から、肖像を採用しないのではないかという意見もあります。イギリス本国から遠く離れた国々の英王室に対する世論や信頼度が、新しいコインに現れる点は興味深いですね。
来年には戴冠式も予定されており、その記念コインも発行される模様です。
イギリスと世界にとって大きな節目となる年に発行されたコインは、今後歴史的な記念品として価値を有することでしょう。長いイギリスコインの歴史にも新しい一ページが加わります。
キャッシュレス化が進む昨今ですが、来る2023年もコインの歴史は続いていくようです。来年もコインに関する情報を発信していきたいと思います。
そして今年もこのブログをお読みいただきありがとうございました。来年も古代~現代のコインの魅力をお伝えしていければ幸いです。
来年もよろしくお願い申し上げます。
何卒良い新年をお迎えください。
《古代ギリシャ・ローマコイン&コインジュエリー専門店》
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