この時代のコインの特徴としては、マケドニアのフィリップ二世時代の初期に発行されたコインに、芸術性の高いものがあります。しかし、領土は拡大するに伴って急速に増産されると、質は低下しました。その息子アレクサンダー大王のコインにも、帝国風の逸品がありますが、その型もやがて大量生産によって変貌してしまいました。
その後の後期ヘレニズム王国の自主発行物には個性的で、魅力的なコインがあります。アレクサンダー以降、その国の権力者の肖像を刻むという風習が、現代まで受け継がれるようになりました。アレクサンダーは、自らをギリシャ神話の英雄ヘラクレスに模してコインに刻んだといいます。
コインは、ヘレニズム王国時代が最終局面を迎える頃に、変化に富んだ興味深いものになります。マケドニア・ペルガモン・シリア・エジプトでは、銀のテトラドラクマを中心に、伝統的なコインが多く生産されました。一方、各王国の衰えをにらみ、各都市が貿易と防衛のために、自主的に結束して発行したコインが増えました。しかし、ローマの圧迫により、東方の地中海世界は次第に自由を奪われはじめ、ギリシャコインの最後の盛り上がりも衰え始めました。
やがて、ほとんどの旧ギリシャの都市は銀のコインの発行を禁じられ、一斉にコイン生産を中止します。ここにギリシャコインは幕を閉じたといってよいでしょう。
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